部活生のトレーニング用にうってつけ。耐久性が高く、価格も安い、コストパフォーマンスに優れた一足です。
厚底シューズが当たり前になった現在でも、アシックスには昔ながらの「薄くて軽く、足を使って走る」タイプのシューズが残っています。
それが「LYTERACER(ライトレーサー)」です。
ライトレーサーといえば、部活動のトレーニングシューズとして長く支持されてきたシリーズ。今回のライトレーサー6も、そのキャラクターをしっかりと受け継いでいます。
最大の特徴は、最近のランニングシューズに多い「シューズに走らせてもらう」感覚が薄いこと。
ミッドソールは薄く、適度な硬さがありますが、その一方でしっかりと屈曲します。
足を接地して、体重を乗せ、足裏で地面を捉えて蹴り出す。
そんなランニングの基本動作を、シンプルに感じられるシューズです。
前作のライトレーサー5と比較すると、アウトソールの形状が変更され、よりフラットで柔軟性を感じやすい方向へ変化しています。
ロッカーによって足を前へ送り出すというより、自分自身の足でシューズを曲げながら前へ進んでいく感覚が強くなっています。
また、耐久性の高さもライトレーサーシリーズの魅力。トラックでのランニングだけでなく、部活動でのさまざまなトレーニングにも対応できるため、一足を長く使いたい学生にとって、コストパフォーマンスの高さも見逃せません。
今回はそんなライトレーサー6を、外観、アッパー、インソール、ミッドソール、アウトソール、そして実際の使用感という順番で詳しく見ていきます。
外観|厚底全盛の時代に、あえて薄くシンプルに
ライトレーサー6を横から見ると、最近のランニングシューズとしてはかなりシンプルなシルエットです。
厚底シューズのようにミッドソールが大きく張り出しているわけではなく、全体的にスッキリとしたフォルム。
ソールの最大厚は約27mmで、現在の一般的な厚底ランニングシューズと比較するとかなり薄めです。
この薄さを見るだけでも、ライトレーサー6が「クッションで楽に走る」という方向ではなく、「軽さと接地感を活かして走る」シューズだということが分かります。
デザインも非常にオーソドックス。
派手なロゴやボリューム感のあるヒール形状ではなく、アッパーからミッドソール、アウトソールまでがコンパクトにまとまっています。
最近のランニングシューズは、厚いミッドソールや大きく張り出したソールによって、ひと目で「速そう」と感じさせるデザインが増えています。
それに対してライトレーサー6は、そうした方向性とは対照的。
見た目からして「道具としてのシューズ」という印象が強い一足です。

アッパー|シンプルだからこそ、フィット感には特徴がある
アッパーは合成繊維と合成樹脂を使用しています。
特にライトレーサー6では、METASPEED+シリーズと同じラストを採用しています。
ただし、実際に履いてみると、しっかり地面を蹴り出せるように固定力が強く、ゆとりは少なめ。足入れした瞬間から、タイトなフィット感を感じやすいシューズです。
短いダッシュやスピード練習だけでなく、部活動ではランニング以外にもさまざまな動きが求められます。
そのため、単純に「走るためだけ」のフィット感ではなく、足をシューズの中でしっかり固定することを意識した設計になっていると感じます。
アッパー生地は、縦・横方向で素材の特性を大きく変えて強度を出すというより、比較的均一な構成です。
このあたりは、シューズをリーズナブルな価格帯に抑えるためのコスト低減も関係しているのかもしれません。
その一方で、ランニングだけを念頭に置くのではなく、マルチなスポーツやトレーニングで使用することを考えた設計だといえます。
以前までのライトレーサーと比較すると、アッパー生地を構成する部品点数も減っています。
中足部から前足部まで、1枚のアッパーをベースとしたシンプルな構成となっているため、通常のランニングシューズと比較すると、フィット感はやや犠牲になっているようにも感じます。
ただし、これは必ずしもデメリットとはいえません。
部活などで毎日のように使用することを考えれば、構造をシンプルにすることで、価格と耐久性のバランスを取ったとも考えられます。
また、中足部から前足部にかけては、アッパーとミッドソールの境目に補強が加えられています。
派手な補強ではありませんが、日常的なトレーニングで負荷がかかりやすい部分を破れにくくするための、最低限の補強が施されていることが分かります。

インソール|交換を前提としないシンプルな仕様
ライトレーサー6で気になるのが、インソールです。
自由に取り外しができるタイプではなく、インソール裏面に接着面があるタイプになりました。

エントリーモデルによく見られるコスト抑止のための仕様です。
自由に取り外しができるインソールであれば、クッション性の高いスポンジタイプに交換することで、履き心地をマイルドにしたり、自分の好みに合わせて調整したりすることができます。
しかし、本作は簡単に交換できるタイプではありません。
そのため、インソールを入れ替えて使用することを想定しているのであれば、購入時にハーフサイズ上げることも視野に入れておいたほうがよいでしょう。
もともとアッパーのフィット感がタイトに感じられることもあるため、厚みのあるインソールを使用する場合には、サイズ感に注意が必要です。
ミッドソール|柔らかさではなく「自分で動かす」ための硬さ
ライトレーサー6のミッドソールで感じるのは、柔らかさよりも適度な反応性です。
素材はライトレーサー5と同様に、適度なクッション性を持つFLYTEFOAMを採用しており、バウンス性の高いBLAST系のフォームではありません。
そのため、最近の厚底シューズのような、足が沈み込んでから大きく跳ね返るようなクッションではありません。
接地したときの沈み込みは少なく、かなりダイレクト。
そのため、ゆっくり走るよりもペースを上げたときのほうが、このシューズの良さが分かりやすいと思います。
そして、ライトレーサー6を語るうえで欠かせないのが「屈曲性」です。
本作ライトレーサー6は、力が大きく加わる指のつけ根部分がしっかり曲がるよう、左右のアウトソールにカットされている部分があります。
これによって、足の動きに合わせてシューズが自然に屈曲します。

そのため、足裏の感覚を大切にするランナーや、自分のフォームを意識しながらトレーニングしたい人には、非常に面白いシューズだと思います。
アウトソール|ライトレーサー6を象徴する「フラット&セパレート」
ライトレーサー6で最も注目したいのが、アウトソールです。
アシックスは6で新しいアウターソール形状を採用し、部分的にミッドソールが見えるパターン配置によって軽量化を図っています。
また、ソールがしっかりと屈曲し、自分の足で路面を捉えられることも特徴として挙げられています。
実際に横から見ると、最近のロッカーシューズのような大きな反りはありません。

ソールはかなりフラット。
ここがライトレーサー6の走りを理解するうえで重要なポイントです。
ソールは、最近では珍しくなったセパレートタイプ。
中足部にはN字型の補強が入っていることも特徴です。

ライトレーサーだけでなく、かつてのターサーやGT-2000などにも同様の考え方の設計が見られましたが、現在もこのような構造を強く残しているのは、ライトレーサーの大きな特徴といえるでしょう。
前へ転がるように誘導するのではなく、足の動きに合わせてソールが曲がる。
着地から蹴り出すまでの一連の動きに意識を持って走ると、自分の体がどのように動いているのかを、より客観的に捉えることができます。
ここが、厚底ロッカーシューズとは決定的に違うところです。
さらに、前作までは外側から地面に着地することを意識したランニング用シューズらしいパターン配置でしたが、ライトレーサー6では縦横方向のパターンに大きな違いがありません。
そのため、ランニングだけでなく、左右方向に力が加わるトレーニングなどでも、地面をしっかりグリップできるよう配慮されています。
これは部活動用のシューズとして考えると、非常に大きなメリットです。
陸上競技のランニングだけではなく、サッカー、バスケットボール、テニスなど、左右への動きが発生する競技のトレーニングでも使いやすいでしょう。
そして、もうひとつ見逃せないのが耐久性です。
アウトソールは硬く、つま先までしっかりと保護されているため、耐久性も申し分ありません。
ヒール部分にも耐久性の高いAHAR+を配置。
クッション性を最優先した設計ではありませんが、その分、接地時の安定感は非常に高くなっています。
「毎日のトレーニングでガンガン使って、簡単にはへこたれない」
ライトレーサー6の魅力は、こうしたところにもあります。


使用感|「硬い」からこそ、自分の足で走れる
実際に走ってみると、最初に感じるのはやはり「硬い」ということ。
最近の厚底シューズに慣れている人ほど、この違いは大きく感じるでしょう。
厚底シューズでは、ソールの形状やクッション、プレートなどによって、ある程度「こう走るとシューズの性能を引き出せる」という方向性があります。
ライトレーサー6には、それがあまりありません。
接地したら、そのまま自分の足で進める。
ペースを上げれば上げた分だけ、足の動きがそのままシューズに伝わります。
もちろんクッション性がないわけではありません。
FLYTEFOAMによる最低限のクッション性は確保されていますが、クッションを最優先したシューズではありません。
そのため、長距離をゆっくり走る用途では、ノヴァブラストなどの厚底シューズのほうが楽に感じるでしょう。
一方で、
- インターバル走
- ペース走
- 短めの距離のスピード練習
- トラック練習
- 部活動のトレーニング
- 普段のジョグから少しペースを上げたいとき
などでは、ライトレーサー6の良さが出ます。
特に面白いのが、足裏で地面を感じながら走れること。
接地の感覚が分かりやすいので、自分のフォームを確認しながら走りたいときにも使いやすいシューズです。
また、部活動で使用することを考えると、ランニングだけでなく、ダッシュやステップ、方向転換など、さまざまな動きを一足でこなせることも大きなメリットです。
逆に言えば、シューズに「楽に前へ運んでもらいたい」という人には、少し物足りないかもしれません。
そして、この特徴こそが、現在でもライトレーサーが部活生やトレーニング用シューズとして残り続けている理由のひとつだと思います。
価格・コストパフォーマンス|6,000円で買える、貴重なトレーニングシューズ
ライトレーサーを語るうえで、価格も外せません。
現在のランニングシューズは、素材の進化やカーボンプレートの採用などによって、以前と比べて価格が大きく上昇しています。
そんななか、ライトレーサーは比較的リーズナブルな価格を維持しています。
販売店によって違いはありますが、ライトレーサー6は実売で6,000円前後で販売されていることが多いシューズです。
しかも、10年以上前と比較しても、価格は大きく上昇していません。
毎日のようにシューズを使う部活動生にとって、この価格は非常に大きなメリットです。
部活ではランニングだけでなく、ダッシュやステップ、グラウンドでのトレーニングなど、シューズをかなり酷使します。
だからこそ、耐久性が高く、買い替えやすい価格であることには大きな意味があります。
一方、以前のライトレーサーと比較すると、アッパーなどの部品点数が明らかに減っています。
インソールも固定式となり、全体として構造はシンプルになりました。
コストダウンという側面はあるでしょう。
ただ、ランニングシューズ全体の価格が上昇しているなかで、ライトレーサーの価格上昇を抑えるためには、こうした簡素化はある程度仕方のないことだと私は考えています。
削るところは削る。でも、トレーニングシューズとして必要な部分は残す。
耐久性、グリップ力、屈曲性、そして割安な価格。
このバランスを考えると、ライトレーサー6は現在でも非常にコストパフォーマンスの高い一足だと思います。
ライトレーサー6はどんな人に向いている?
ライトレーサー6は、万人向けのランニングシューズではありません。
むしろ、用途が合えば非常に大きな価値を発揮するシューズです。
学生の部活動用シューズを探している人
ライトレーサー6が最も活躍するのが、部活動でのトレーニングです。
陸上競技に限らず、ランニング、ダッシュ、ステップなど、さまざまな動きを行う部活動のトレーニングシューズとして使いやすいでしょう。
耐久性を重視する人
アウトソールが硬く、つま先からヒールまでしっかりとした作りになっているため、日常的なトレーニングで使いやすいシューズです。
「練習用だから、とにかく長持ちしてほしい」という人には魅力的です。
土のトレーニングコースを使用する人
グリップ力のあるアウトソールは、土のトレーニングコースとの相性も良好。
特に、舗装路だけでなく土のグラウンドでの使用頻度が高い人には、このシューズの特徴が活きてきます。
スピードトレーニング用のシューズを探している人
サブスリー以上の走力を持つランナーなど、普段のランニングとは別に、スピードトレーニング用のシューズを探している人にも適しています。
足裏からのフィードバックが分かりやすいため、フォームを意識したトレーニングにも使いやすいでしょう。
ライトレーサー6が向いていない人
一方で、誰にでもおすすめできるわけではありません。
練習用シューズを1~2足しか持っていない人
ライトレーサー6は、万能型の一足というより、明確なキャラクターを持ったトレーニングシューズです。
一足ですべての練習をこなすのであれば、もう少しクッション性と汎用性のあるシューズを選んだほうが使いやすいでしょう。
舗装路でのトレーニングが中心の市民ランナー
アスファルトの長距離ランニングを中心に行う場合、ライトレーサー6の硬さや薄さが負担になる可能性があります。
特にゆっくり長く走る用途なら、厚底タイプのほうが快適です。
筋力を使った走りを求めていない人
ライトレーサー6は、シューズがランナーを助けてくれるタイプではありません。
自分の足で地面を捉え、ソールを曲げて前へ進む。
そのため、楽に走ることを最優先する人よりも、足を使って走るトレーニングをしたい人向けです。
ライトレーサー6と比較したいシューズ
ライトレーサー6が気になっているなら、同じアシックスの「ハイパースピード」や、アディダスの「アディゼロ BK」なども比較候補になります。
アシックス ハイパースピード
ライトレーサー6と同じく、FLYTEFOAM系のミッドソールを採用していますが、こちらはソールに厚みがあります。
ライトレーサー6よりもクッション性があり、フラットなソールによって地面との接地感も比較的マイルド。
ライトレーサー6よりも汎用性を重視したい人には、ハイパースピードのほうが使いやすいでしょう。
価格帯も近く、マラソンのトレーニング用として考えると、より幅広い用途に対応できます。
アディゼロ BK
ライトレーサー6と同じく、ミッドソールが薄く、足裏の感覚を重視したタイプ。
ただし、こちらはライトレーサー6以上にハードルが高く、より上級者向けという印象です。
薄底シューズを好み、よりダイレクトな接地感を求めるランナーなら、比較してみる価値があります。
まとめ|ライトレーサー6は「自分の足で走る」ための一足
ライトレーサー6は、最新の厚底ランニングシューズとはまったく違う方向性を持ったシューズです。
軽量で、ソールは薄め。そして、しっかり曲がる。
ロッカーによる強い転がり感よりも、自分の足で地面を捉えて前へ進む感覚を重視しています。
前作のライトレーサー5と比較しても、6は「より速く走らせる」というより、「より自分の足を使わせる」方向へ進化した印象があります。
厚底シューズに慣れている人が履くと、最初は硬く感じるでしょう。
さらに、普段から厚底シューズばかり履いている場合、いつもとは違う筋肉を使うため、翌日に筋肉の張りや疲労を感じることもあります。
しかし、ペースを上げて足をしっかり動かしてみると、このシューズの良さが分かってきます。
「シューズに走らされるのではなく、自分で走りたい」
そんなランナーには、今でもこうした薄底・軽量タイプのシューズは十分に魅力的です。
そして、学生の部活動用として考えれば、耐久性、グリップ力、軽さ、価格のバランスに優れた非常に実用的なシューズでもあります。
毎日の練習で気兼ねなく使える。
多少ラフに扱っても耐えてくれる。
ランニング以外のトレーニングにも対応できる。
それでいて、しっかり走り込める。
ライトレーサー6は、華やかな厚底シューズとは対極にある存在です。
しかし、だからこそ価値があります。
「シューズに走らせてもらう」のではなく、「自分の足で走る」。
ライトレーサー6は、そんなランニングの原点を思い出させてくれる一足です。

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